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法人・個人事業主の方々が負う賠償リスクは多様化や高額化が進んでおり、リスクへの対応は避けることは非常に困難です。
賠償リスクを未然に軽減することは可能ですが、リスクを完全に排除することはほぼ不可能といえるでしょう。ついては、万が一の経営リスクを軽減するためには保険の加入は必須と言えます。
対象とする事故 | 対応する保険 | |
---|---|---|
経営リスク | 会社役員個人の損害賠償請求 | 会社役員賠償責任保険(D&O保険) |
労務災害リスク | 従業員に対する使用者責任 | 使用者賠償責任保険 |
パワハラ・セクハラによる従業員からの損害賠償請求 | 雇用慣行賠償責任保険 | |
賠償責任リスク | 管理する施設や設備に起因する事故 | 施設賠償責任保険 |
業務遂行に起因する事故 | 請負賠償責任保険 | |
作ったものや工事・作業の結果に起因する事故 | 生産物賠償責任保険 | |
業務ために修理、保管等のため、またはリース・レンタル財物など、他人の財物の損壊による事故 | 保管物賠償責任保険 | |
仕事の遂行のために預かった自動車に生じる事故 | 自動車管理者賠償責任保険 | |
運送貨物に生じる事故 | 運送業者貨物賠償責任保険 | |
顧客情報の漏えいによる事故 | 個人情報漏えい保険 | |
サイバー攻撃などの不正アクセスによる事故 | サイバーリスク保険 |
上記で確認した通り、企業が負う賠償リスクは多岐に渡ります。 他のリスクの紹介したいところですが、ここでは近年特に注目されており、注意をしていただきたい「労働災害リスク」について紹介させていただきます。 これまでの「労働災害リスク」といえば、従業員の業務中における事故を補償するものが一般的であり、政府労災でも補償可能なことから、建設業などのケガのリスクの高い業種ではニーズが高いものでした。
しかし、近年では「新しいタイプの労災」として、「使用者賠償責任」「雇用慣行賠償責任」といった「賠償リスク」が発生しております。 「賠償リスク」となるので、非常に高額になるケースも多いことから経営リスクとなります。この新しいタイプの労働災害は、皆が当たり前のように加入している自動車保険と同様に保険加入の必要性があるといっても過言ではありません。
出典:厚生労働省 こころの耳
上図のとおり、精神障害による政府労災請求は年々増加傾向になります。 認定が500件弱じゃ少ないんじゃないか?と感じる方もいらっしゃると思いますが、 労災認定=会社の責任が認められる。という訳ではなく、労災請求が認定されない場合や、そもそも労災請求をしない場合でも、会社の責任は認められ、賠償請求は成り立ちます。
これは、労災認定を行う国と、会社の責任を訴える民事訴訟はそれぞれ独立しているためです。 この表からは、精神障害により企業の責任が問われる可能性が増加傾向にあり、身近に存在しているということをご理解いただければと思います。
前述で見た、精神障害による政府労災に認定や企業の責任が認められるケースが増加していることにも理由があります。 ここでは、主に2つの理由を紹介いたします。
平成18年4月 | 改正労働安全衛生管理法の施行 | 事業者のよる安全衛生管理体制の強化を義務付け |
平成20年3月 | 労働契約法の改正 | 安全配慮義務について明文化 |
平成27年12月 | 心のストレスチェック制度の導入 | 年1回のストレスチェックを義務付け |
労働契約法施行の際に、安全配慮義務が明文化されたことによって、安全配慮義務違反として民事上の責任を問われる可能性が発生しました。 安全配慮義務違反が損害賠償請求され得る法的根拠についてですが、従業員(もしくは家族、遺族)は安全配慮義務違反による債務不履行責任(民法415条)で会社に提訴を行います。 会社は自らが安全配慮義務を果たしていたことを立証する必要がありますが、それは非常に困難です。
安全配慮義務違反には3つの基準。
この3つを満たすと安全配慮義務違反が認められ、逆にこれらを十分に対策していれば無過失を立証出来ます。
しかし、会社自身が無過失であることを立証する事は非常に難しいと言えます。 例えば、建築業では国土交通省の「建設業における労働安全衛生対策」、運送業では厚生労働省の「陸上貨物運送事業における荷役作業の安全 対策ガイドライン」など、各業種内の協会等による既出で誰でも確認出来るガイドラインや安全対策のたった1つの項目が実施されていない場合でも、「実施しない=事故が起きるという予見可能、結果回避に勤めなかった」と、安全配慮義務違反である判断をされる恐れがあります。
出典:日本弁護士連合会「弁護士」白書
平成11年以降の法的サービス拡充を目的とした司法改革の影響や、平成16年度より設立されたロースクールの影響を受け、弁護士の数は急増しました。人数が増えることでこれまでと同じ仕事数では弁護士としての生活が成り立たなくなりますので、労働問題を題材とする案件が増えるのも必然ということになります。
従業員が死亡や後遺症、将来に渡り働けなくなった場合に賠償請求が認めれると、逸失利益や慰謝料の支払いが発生する賠償額は高額となります。その場合、政府労災で補償される補償は不足するため、会社は大きなダメージを受けることになります
費用 | 政府労災 | 損害賠償 | 政府労災との差額分 |
---|---|---|---|
治療費 葬祭費 弁護士費用 等 |
1,200万 遺族一時金 + 葬儀費用等 |
200万 弁護士費用50万 + 葬祭費用150万 |
+1,000万円 |
逸失利益 | なし | 5,531万 500万 × (1-30%) × 15.803 基礎収入額 × 生活費控除 × ライプニッツ係数 |
▲5,531万円 |
慰謝料 | なし | 2,800万 弁護士基準の場合 |
▲2,800万 |
※夫:年齢35歳 年収500万 妻、子供2人の場合で計算しています。一般的な計算ですので、過失相殺や慰謝料の基準によって違いは出ます。 | 合計7,331万円 |
このように、政府労災では「逸失利益」や「慰謝料」の支払いはありませんので、労災差額が出てしまいます。また、後遺症の等級が高い場合には死亡時より差額が大きくなるため、企業が負うリスクは非常に高くなります。
雇用慣行賠償責任保険とは、セクハラ、パワハラ、不当解雇など、雇用に関連して生じる、会社・役員・管理職に対する損害賠償を補償する保険です。
昨今の情勢では「ウチの会社に限ってそんなことはない」とは言い切ることが出来ない状況になっております。雇用慣行賠償は使用者賠償と比較して高額にはなるケースは少ないですが、発生するリスクは非常に高くなっています。
出典:厚生労働省ホームページ
上図は総合労働相談センターに寄せられている相談件数です。 厚生労働省が管轄し労働問題に対する相談を行う、「総合労働相談コーナー」は、全国に約380カ所設置されています。
驚くことに相談件数は年間100万件を超えているのです。雇用者数は約6,000万人ですので、60人に1人は労働に対して何らかの問題を感じていて、実際に相談をしているということになります。
2006年に、「労働審判制度」がスタートしました。 労働審判制度は、使用者と使用人の間で生じた労働紛争を、迅速に解決させるために始まったものです。 この制度は、好況時から見た現代情勢においては終身雇用制度が崩壊しており、幾度にわたる転職が当たり前となった時代に沿うべく誕生した制度といえると考えられます。 こういった制度や時代背景によって、労働問題による会社が負うリスクは高まっているのです。
皆様は「退職代行サービス」をご存じでしょうか。
様々な理由によって自ら雇用主に退職意思が伝えられない人が増えたことにより発生したサービスです。 当初はNPO法人や人材派遣会社が労働者の権利保護のために始めたものでしたが、現在では収益事業として事業発展をしている事業や弁護士も執り行っています。
このサービスが普及していることと賠償リスクにどんな因果関係があるのかというと、「退職を代行しなければ伝えられない職場環境」ということが一目瞭然となるということです。 加えて、こういった事業を展開する企業、勿論弁護士も労働問題についての「プロ」ですので、そういう職場環境であるとわかった場合、訴訟のアドバイスを行うことが想定されます。特に弁護士の場合は自身の収入にも繋がりますので、アドバイスをしない手はないと言えるでしょう。